「日本百景」にある宿が、次に仕掛けるのは能登の事業者を巡るサイクリングツアーだった
#宿泊・体験#営業再開#インバウンド#体験観光

「日本百景」にある宿が、次に仕掛けるのは能登の事業者を巡るサイクリングツアーだった

石川県鳳珠郡能登町越坂
📅創業:2023年
従業員:3名(共同経営)
👤代表:小林 昇市
事業者名:TSUKUMO STYLE

震災4ヶ月前にオープンした一棟貸し宿。復旧業者の長期受け入れで収益を維持しながら、補助金3件を活用して観光転換の基盤を整えた。インバウンド比率50%超、能登を巡るサイクリングツアー準備中。

取材日: 2026年4月ライター: 河野 孝史

※掲載情報は執筆時点のものであり、制度内容は変更される場合があります。また、本事例は事業者の体験に基づくものであり、申請結果や補助金額を保証するものではありません。申請をご検討の際は、窓口で最新情報をご確認いただく事を推奨します。

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支援がもたらした変化

震災後も復興業者の長期受入で収益を途絶えさせず、補助金3件を活用して蔵の解体・コンテナハウス設置・サイクリングツアー企画と準備を実現。
フェーズ 1

課題

2023年9月オープンの一棟貸し宿。わずか4ヶ月後の震災で観光客向け営業が停止。建物の損壊は軽微で電気も維持されたが、バスルームに隣接する蔵が危険な状態に。震災1ヶ月後から保険会社・復旧業者などの長期宿泊が始まり2年間続いたが、公費解体が一段落した2025年12月ごろから業者の需要が減少。観光客の本格誘致施策が求められる状況となった。

フェーズ 2

選択と決断

業者需要が消える前に動く方針を固め、補助金3件を並行申請。①持続化補助金で解体・壁の再建、②営業再開支援補助金でコンテナハウス(仮オフィス兼倉庫)設置、③チャレンジ支援補助金でサイクリングツアー整備・専門家招聘。「長期的に滞在している業者さんがいなくなってから焦って動いても遅い」という判断が起点だった。

究極の二択

業者の需要が減少しても現状のまま続けるか、新たな来る目的作りに投資するか

選択肢 A
現状維持
  • 安定収入が続く間は設備投資が不要
  • 補助金申請の手間と立替費用が発生しない
決断
補助金3件を組み合わせて来る目的作りに投資

補助金

小規模事業者持続化補助金 / 営業再開支援補助金 / チャレンジ支援補助金

コスト

(各制度の自己負担分)

  • 蔵の解体・壁の再建で安全な宿泊環境を整備
  • コンテナハウスでオフィス・倉庫スペースを確保
  • サイクリングツアー整備で集客コンテンツを構築

決め手:

「業者需要が消えてから動いても遅い。観光再開シーズンが来る前に整備を終わらせる」

フェーズ 3

行動と変化

解体・壁の再建が完了し安全な宿泊環境が整備された。コンテナハウスの設置でゲストが全室入っても業務が回せる体制に。サイクリングツアーはナショナルサイクルルート候補地・能登の裏路地を活かしたルートを設計中。

⚠️

申請する人が直面しやすい『実務の壁』

立替資金の壁

補助金は全額立替払いが基本。チャレンジ支援補助金では一時的な資金借入が必要になった。「補助金は絶対もらえるとわかっていても、立替資金が準備できない事業者は活用を躊躇してしまうのではないか」

使途制限の壁

チャレンジ支援補助金ではツアー運営用の自転車は対象だが、ゲストへの貸し出し用自転車は対象外。補助金ごとの使途ルールを事前に確認しないと、購入後に対象外と判明するリスクがある。

スケジュールの壁

採択から完了報告までの期間が決まっており、事業者・業者・専門家のスケジュール調整を並行して進める必要があった。

壁の乗り越え方(要点)

▼ こうやって乗り越えた

  • キャッシュフローの悪化を見越して、事前に資金の借入先を確保した
  • 補助金ごとの使途ルールを担当者に確認した
フェーズ 4

現在から未来へ

2026年5月以降にカフェを再オープン予定。栽培中のレモンを使ったレモンサワーや柑橘ジュースをメニューに加え、サイクリング体験と収穫体験を組み合わせたコンテンツを拡充。カヤック・サップなどのアクティビティと組み合わせ「能登をじっくり味わう」体験を整備していく。

📖

再起の裏側(外国人観光客への取り組み)

外国人観光客の能登への動線作り

「能登半島を一周回る人は多い。でも、ところどころにもっとじっくり能登を味わえる場所があるといいと思っていた」。サイクリング・カヤック・サップ・収穫体験を通じて能登に長時間滞在する理由を作っていきたい。「外国の方が来ると、宿だけでなく地元の事業者さんのところにもお金が落ちる。インバウンドは能登全体にとってプラスになる」。震災後2年間、復興業者という安定収益に支えられながら来る目的作りの準備を進めてきた。

## 今回活用した制度

小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)

小規模事業者が経営計画を作成して取り組む販路開拓・生産性向上を支援する制度。蔵の解体・壁の再建費用に活用。

💰
補助率:2/3
📄
上限:200万円(国・災害枠)・100万円(県)
ここがポイント:商工会等の伴走支援を受けながら経営計画を作成。解体・修繕・設備導入に幅広く対応。

営業再開支援補助金

震災で被害を受けた事業者の営業再開を支援する補助金。コンテナハウス(仮オフィス兼倉庫)の設置に活用。

💰
補助率:2/3(中堅企業は1/2)
📄
上限:300万円
ここがポイント:コンテナハウスなど仮設的な設備投資にも対応。

チャレンジ支援補助金

新たな事業展開・取り組みへの挑戦を支援する補助金。サイクリングツアー整備・専門家招聘に活用。

💰
補助率:2/3(中堅企業は1/2)
📄
上限:300万円
ここがポイント:全額立替払いが必要なためキャッシュフローの事前確認が必須。貸し出し用品は対象外。専門家招聘費用は対象。

✍️編集後記

震災後は復旧業者を中心に受け入れながら、補助金も活用しながら次のステップへの準備を進めていくという好事例。

また、外国人観光客向けの対応が特に進んでおり、予約の半分以上が外国人観光客という能登では珍しい宿泊施設となっている。宿泊している外国人観光客が、より能登に滞在し、能登の他の事業者のところにも滞在できるような仕組みとしてサイクリングを企画し、補助金を活用しながら準備を進めていて、能登の宿泊事業者としては比較的新しい取り組みとなっていると感じた。

一方で補助金の活用を考えたとき、一時的な持ち出しが発生してしまう点が活用への壁となっていることは重要なポイントである。つなぎの融資と合わせた運用など、お金の流れを整理した上でフォローするポイントの洗い出しと、その対応があればハードルが下がるかもしれない。

能登百業録 編集部

河野 孝史