※掲載情報は執筆時点のものであり、制度内容は変更される場合があります。また、本事例は事業者の体験に基づくものであり、申請結果や補助金額を保証するものではありません。申請をご検討の際は、窓口で最新情報をご確認いただく事を推奨します。
支援がもたらした変化
課題
地震で津波が工場に入り、機械も全て損傷した。しばらくは動いた機械もあったが、最終的には工場にあった機械の全てを交換しなければならなかった。
地震発生後は高台に避難していて、余震や津波の不安から、現場に戻りたくても戻れない日々が続いた。初めて現場に足を運べたのは発生から1週間から10日後のことだった。「前は海、横はもう川」という立地で、津波の影響は甚大だった。現場を見て「もうダメや」、「絶対無理やと思った」。
工場も被害を受け、建物の修理も必要な状況の中でどう復旧するのかの判断を迫られた。
自分たちだけでは設備の復旧は到底無理だった。
選択と決断
地震からおよそ3か月が経った頃、信用金庫の担当者が訪ねてきてくれた。被害の状況や困りごとを聞いてもらう中で、初めて支援制度や補助金の存在を知った。
しかし、その当時は自分達で窓口に通い、手続きを進められる状態ではなかった。再び相談すると「手続きもサポートします」と言ってもらえた。
「絶対大丈夫です」という言葉に背中を押され、再建に向けて一歩踏み出すことを決断した。
廃業か、補助金を活用して再建するか
廃業する
- •工場も機械も全て津波でダメになった
- •自分たちだけでは設備復旧は絶対に無理
- •「もうやめようかな」と本気で考えた
補助金を活用して再建する
補助金
なりわい再建支援補助金、小規模事業者持続化補助金
- •信用金庫による伴走支援
- •「なんとかなるんじゃないか」という希望がみえた
- •もう一度挑戦する気持ちになれた
決め手:
「事業再開は絶対無理」という絶望的な状況から補助金制度を知り、「なんとかなるんじゃないか」という希望がみえ、再び挑戦しようという気持ちになれた。信用金庫による支えも決断の後押しになった。
行動と変化
申請を開始してから全ての手続きが終了するまで、1年以上かかった。
なりわい再建支援補助金で冷風乾燥機と業務用冷凍庫を導入。小規模事業者持続化補助金で建物の修理、真空機、ポンプなどを整備した。
申請手続きは想像以上に大変だった。手続き期間が長く、「本当に補助金がもらえるのか?」、「途中で挫折するんかな」と不安になる時もあった。
計画が途中で変わることもあった。はじめの頃は動いていた冷凍庫や室外機も、交換が必要になり、こうした変更が手続きの長期化にも影響した。
それでも信用金庫の担当者が一貫して寄り添い支えてくれた。手続きの進め方や申請内容の調整まで「何もかも助けてくれた」。親身に伴走してくれたおかげで、長期に渡る手続きを乗り越え、再建にたどり着くことができた。
申請する人が直面しやすい『実務の壁』
手続きの複雑さと期間の長さ
申請開始から完了まで1年以上かかった。「書き方が違う」修正の指示が何度もあり、対応を迫られた。厳格な手続きに補助金を受けることの重大さを痛感した。
途中で変わる計画
計画が途中で変わることもあった。使えると思った機械も後から故障していることが分かり、計画の見直しが必要だった。臨機応変の対応が求められた。
気持ちの持続と不安
手続き期間が長く、「本当に補助金がもらえるのか」と不安になる時もあった。事業再開への気持ちを持続させることが大きな課題だった。
壁の乗り越え方(要点)
▼ こうやって乗り越えた
- •信用金庫の伴走支援
- •見積訂正や業者への手配に素早く対応
- •地域や周りの方の優しさを前に進むエネルギーに
現在から未来へ
補助金を活用し設備の復旧は果たしたが、すべてが元通りになったわけではない。代々大切に造り続けてきたいしりは、製造に欠かせない釜や木桶の損傷に加え、作業場や近年のイカ不漁の影響もあり、再開を断念することとなった。
それでも、地のモノにこだわる姿勢は変わらない。これからも出来ることをひとつひとつ積み重ねながら、お客様の要望にできる限り応えていく。
再建の過程では、地域の人たちの支えも大きな力となった。外出先から戻ると、町内の方が作業場を片づけてくれていたこともあった。祭りなど地域の活動も少しずつ戻りつつある。
こうした支えに応えていくためにも、長年積み重ねてきた営みを、自分たちらしく続けていく。
再起の裏側
「絶対無理からやろうへ」
地震後、現場を見た時は「絶対無理や」と思った。工場も機械も全てダメになり、年齢的にも「もう無理やろ」と本気でやめることを考えた。 しかし、信用金庫さんから補助金の話を聞き、「補助金を使えば、なんとかなるんじゃないか」という見通しがついた時、気持ちが変わった。制度があったから、「やろう」っていう気になった。 補助金のおかげで、この年でもできた。
「手続きの厳格さと長さ」
当初、国の方が視察に来られた際に「全部(補助対象に)できます」と簡単に言われ、「国は助けてくれるんや」と思っていた。しかし実際には厳しい審査があり、「書き方が違う」「ダメ出し」が何度もあって、見積もりの訂正などが必要だった。 申請開始から完了まで1年以上かかり、途中で「(補助金は)本当に当たるのか?」「途中で挫折するんかな」と不安になる時もあった。 「若いもんがしとるとこなら、いろいろ発信したりして、自分でもどんなやり方でもすると思うけど、私らみたいな年齢になってくると、ちょっときついもんがあって」。年齢的にサポートなしでは無理だった。 「被災者としたらもっとこう、ポンと飛び越えて早くできればもうちょっと頑張る人が増えるのではないか」とも感じた。
「サポートのおかげで乗り越えた」
信用金庫さんが「何もかも助けてくれた」。ダメ出しに対して何度も対応してくれた。「素早く対応していただいたこと、そのおかげ」で乗り越えられた。 「絶対大丈夫や」という言葉を信じて、半信半疑ながら進めた。「絶対自分らじゃ無理やから、そういう制度があったおかげで私らは助かった」。 地域の人たちにも助けてもらった。外から帰ってきたら、町内の皆さんが全部片付けてくれていた。岩手から来た応援職員の若い人が気遣ってくれて、役場の健康福祉課から見回りの電話もかかってきた。 「ホロっとくる」「頑張ろうかなって思う」。「こうして日常に戻ったってこと」が何より嬉しい。
「これから」
製造体制は「規模は小さくなったけれど、それなりに」復旧した。ただし、まだ完全には元に戻っていない。地域から人が出て行ってしまい、商売の環境も変わった。外への発信もまだできておらず、「もうやってないやろ」と思っている顧客もいる。 「元々こういう性格やから。自分から発信はあんまりせん方や」。目立つことは好きではないタイプだが、これからは発信も必要だと感じている。 「跡取りもないし」という状況だが、できる範囲で頑張り、お客さんの要望に応えていきたい。 最後に、同じ境遇の人たちへメッセージを送る。「諦めんと活用できるものは活用して頑張った方がいい。商工会さんに一回とりあえずご相談して。そしたらいいこと、こういう知恵を教えてもらえて、絶対に諦めんと行けばいいなって思う」。
## 今回活用した制度
石川県なりわい再建支援補助金
事業用資産の復旧・整備に活用。冷風乾燥機と業務用冷凍庫を導入した。
小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)
建物の修理、真空機、ポンプなどの整備に活用した。
✍️編集後記
寺下社長の「もうやめようかな」から「やろう」への転換は、補助金という制度の存在と、それを支えるサポート体制があってこそ実現したものだった。手続きの大変さ、期間の長さ、不安な気持ち。それらを乗り越えられたのは、信用金庫さんをはじめとする周囲の支援があったから。
「補助金がなかったら商売はアウトやった」という言葉は、制度の重要性を物語っている。同時に、「諦めんと活用できるものは活用して頑張った方がいい」というメッセージは、同じ境遇にある事業者への力強いエールだ。
年齢的な不安を抱えながらも、サポートを得て前に進む姿勢と「仕事を頑張って、孫にお小遣いをあげたい」と笑顔で語るご夫婦の明るさは、地域に勇気と元気を与えてくれている。
能登百業録 編集部
木本 正希
