※掲載情報は執筆時点のものであり、制度内容は変更される場合があります。また、本事例は事業者の体験に基づくものであり、申請結果や補助金額を保証するものではありません。申請をご検討の際は、窓口で最新情報をご確認いただく事を推奨します。
支援がもたらした変化
課題
震災前から深刻な人手不足に悩んでいた。スタッフが高齢化(70代前後)し、体調不良などで退職者が発生。ハローワークに求人を出しても応募が全くなかった。「わざわざハローワークに行く人はいない」。従来は、お風呂に来た知人に声をかける「一本釣り」でなんとか凌いでいた。
そこに震災が発生。復旧支援や工事関係者で宿泊需要が急増し、掃除や布団敷きを回すためのスタッフが圧倒的に不足した。
選択と決断
人手が足りず困っていたところ、支援員からスポット雇用サービス「タイミー」の紹介を受けた。最初は「タイミーって何?」と思っていたが、ハローワーク等の既存媒体では全く採用できなかった実績もあり、試しに使ってみることにした。
求人票の作成も担当者がサポートしてくれた。掃除、布団の準備、食事の盛り付けなどを1回3時間程度のスポット勤務で募集。午前(9-12時)、午後、夕方の枠を用意した。
業務についても必要最小限のことを伝えつつ、若い人向けに何か仕事の内容を変えたりせずできた。お互いに教えあいながらうまくやってくれていた。
究極の二択】人手不足をどう解決するか
このまま「一本釣り」を続ける
- •コストがかからない
- •知り合いだけで回せる
- •ただし高齢化と退職で限界
タイミーを活用してスポット雇用
コスト
月10万円程度の手数料(福利厚生不要)
- •求人票作成サポート + 相互評価システム
決め手:
「ハローワークも全滅、一本釣りも限界。手数料はかかるが、探す手間と求人作成のサポートがあるのは楽」という判断。
行動と変化
導入後、想定外のことが次々と起きた。
まず、若い人が来るようになった。高齢者ばかりだった職場に、20代の若者や大学生が応募してくる。医学部の女子学生は夏休みの間、1日も休まず来てくれた。「これからお医者さんになるけど、またこっち来たら来てね」と言ったら「必ず来ます」と約束してくれた。
次に、男性の応募があった。掃除業務には男性は来ないと思っていたが、接客よりも裏方を好む層が一定数いた。岐阜から来た54歳の男性は「女性よりきれい」と言われるほど気が利いた。
そして、県外からの支援者・ボランティアの活用がうまくマッチした。災害ボランティアや他県からの応援職員が、休日の空き時間に働きに来るようになった。北海道から珠洲へ支援に来て、休みの時に働きに来てくれる人もいた。
さらに、タイミー経由で来た人のうち、2名が直接雇用のパートに切り替わった。タイミーで働いた人の中から、相性の良い人をパートの直接雇用に切り替えることで採用ができた。今はタイミーを使わずによくなった。
結果、30名規模の満室状態でも業務を回せるようになり、若い人が入ることで職場の雰囲気が明るくなった。既存の年配スタッフにとっても良い刺激になっている。
申請する人が直面しやすい『実務の壁』
操作の壁(複雑そうで不安)
「タイミーって何?」から始まり、スマホアプリの操作が複雑そうで導入を躊躇していた。
求人票作成の壁(何を書けばいいか分からない)
仕事内容をどう説明すればいいか、どんな条件を提示すればいいか分からなかった。
トラブルの壁(来る人がどんな人か不安)
スポット雇用で来る人の質や、ミスマッチによるトラブルが心配だった。
壁の乗り越え方(要点)
▼ こうやって乗り越えた
- •担当者が現場の仕事内容を細かくヒアリングし、実態に合った求人票を作成してくれた
- •来る人が仕事内容を理解しており、ミスマッチやトラブルがなかった
- •相互評価(レビュー)でお互いに選べる仕組みで安心できた
- •「ぼーっとしてたら導入できていた」ほどスムーズだった
現在から未来へ
4月から新たに3年間の指定管理契約が決まったため、体力が続く限りは続けていきたい。
「震災前からタイミーがあればよかった」と思うほど、人手不足解消に役立っている。
タイミー利用者の声
「時間単位で働ける」
タイミーを選んだ理由は、時間で働けることでした。タイミーを利用始めたときは、働けるのがいつまでか、次の仕事がどうなるかまだはっきりしていないときで、離れやすさがありました。やまびこさん以外にも、穴水のゴルフ場や、七尾の牡蠣剥きの仕事もしていましたね。 時間としては午前中だけやまびこさんで働いて、午後は他の活動に時間を充てていました。
「タイミーなのにすごく任せてもらえる」
タイミーで入ってまだ人となりがわかっていないのに、いろいろ聞いてくれたり、任せてくれたり、受け入れてくれていなという感じがしました。 清掃の仕事がメインなのですが、教えてもらうときが2人1組で、通常は1階1人、2階1人、他1人という感じです。宿泊される人数によっては2人でも回せることもあります。パートさん2名でタイミー1名でした。 清掃以外の仕事も入るときがあって、法事で地域の方が集まるときの盛り付け作業、キッチンの掃除や、枕カバーのアイロンがけなどですが、難しくはありませんでした。
「働く先を通じて関わり合いを増やす」
私は働く先の相性を大事にしていて、それをお試しでできるのがよかったのと、やまびこさん以外の働き先や自身の活動もそうですが、いろいろな人と関わり合いができて、そこから広げる手段としても使えるのがよいと思っています。
## 今回活用した制度
タイミー(スポット雇用サービス)
スキマ時間で働きたい人と、人手が必要な事業者をマッチングするサービス。
✍️編集後記
セミナーハウスやまびこの事例が示すのは、「従来の採用手法が通用しない時代」における新しい雇用のあり方だ。ハローワークも一本釣りも限界を迎えた中で、スポット雇用という選択肢が、人手不足の解消を目指して活用したサービスが、結果的に直接雇用者の増加と、若者の採用による職場の雰囲気向上につながった。
タイミーの活用におけるポイントは、「最初は人がなかなか来なくても、レビューを見て来る人がいるので、相手の都合に合わせて来てもらう時間を調整したりなどの柔軟さも必要」とのこと。
タイミーで入ってくる人は、他に自身の活動があり、時間単位で働けることやお試しで働けることをメリットと感じている。フルタイムを前提としない作業や、比較的任せやすい簡単な作業をお願いし、関係性ができてきたら臨機応変な作業もお願いするという流れを作ることで、直接雇用につながることも期待できる。
能登百業録 編集部
河野 孝史
